これまで二人取り四方投げは、術理としての単純性と普遍性が伴わず、稽古を重ねても道の開ける思いは遠かった。一人に対する相対基本動作の転換・回転に迷いはないはずだが、二人に対して軸足交代を連ねるうえで足腰の動きに基本的統一が欠けるのであった。
この1年間、前方回転にたいして半回転の連続で一回転とする基本動作を考案し、しかもそのことで半回転ずつの間に後ろ回転を挿入することができるようになり、それが二人の受けそれぞれに四方投げ表と裏を同時に生み出すこととなった。
受け二人の諸手取りを交差取りと片手取りで持ち、縦に並べて振りかぶると魂氣は上丹田にて体軸の魄氣と氣結びし、そこで回転の要素を前方回転の半分、後ろ回転、前方の残り半分と連ねた後、一気に正面打ち近似で上丹田が取りの手背から離れる。つまり、陰の魄氣から直立へと向き直れば取りの両手は受けの項に向かって伸展する。受け二人の手はそれぞれ四方投げに畳まれ、尚且つ互いに重なって魂氣はそれぞれの背部に抜ける。四方投げの表と裏が同時に成立している。
『基本即真髄』
基本動作を日に日に検討する気持ちこそ、合気道の稽古を持続する原動力である。さらに、それは開祖の言葉を動作することの願いに由来する。
『軸足交代を連ねて〝千変万化〟』
2020/1/1
合気道開祖植芝盛平翁 50年祭記念 合気道熊野塾
『光』の円の真中に生まれる〝天の御中主、大虚空の中心〟であろうか。
開祖の揮毫は言葉(文字)と念いと動作の三位一体、つまり合気そのものであることが窺える。