丹田に置く手は掌に魂気の珠を包み、すべて広義の陰である。小手返しの手は狭義の陽、二教の手は狭義の陰とする。丹田とは魂気が体軸に出入りする体表上の中心点であるが、中丹田では左右の側頸で魂氣の出し入れが行われるものとする。また、下丹田の裏である腰仙部に陰の魂氣が置かれると、同側の足、つまり魄気と結んで体軸に与る。これは吾勝に喩えられる。
このとき対側の足は魄氣の影響を受けず、足先が地に触れるのみで自在に置き換えることができる。非軸足と呼ぶことにする。同側の手すなわち陰の魂氣は下丹田に置かれるが、魄気と結ぶことはなく、体軸に与らない。非軸足と同期して自由に空中へ陽の魂氣を発することができる。これは正勝に喩えられた。
単に陽の魂気と言えば吸気とともに丹田から空気中に差し出された手を言う。このとき掌が開かれて魂氣の珠は空中に放たれ、大気となって虚空に広がると思うことにする。相手の側頸に嵌ればその体軸にひびき、呼気に移ればその底丹田を抜けると魂氣は自らの体側に巡り、半歩出した非軸足と結ぶ瞬間移動した新たな体軸となる。その際は元の軸足が継ぎ足となって二足が一本の体軸を成し、両手はともに体軸に与る。入り身一足の動作であり、勝速日に喩えられた。
気の置きどころは丹田もしくは腰仙部であり、軸足側なら魄気に結んで体軸に与るが、非軸足側なら魄氣との結びは解かれており、魂の比礼振りが起こると言い表され、〝身の軽さを得る〟のである。 2023/9/30
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