*神氣館【 高槻市 天神町道場 】               Shinkikan aikido tenjinmachi-dojo (公財)合気会公認道場                                   Takatsuki-city Osaka JAPAN         大阪府合気道連盟加盟道場                                       開祖植芝盛平の言葉と思いを動作する basic techniques from words and thoughts of the Founder, Morihei Ueshiba        不動の軸足に陰の魂氣:〝吾勝〟  非軸足と魂の比礼振り:〝正勝〟        〝この左、右の気結びがはじめ成就すれば、後は自由自在に出来るようになる〟:軸足交代         二つはこんで一と足すすむ・入り身一足と、体軸に与る両手の巡り:〝左右一つに勝速日、業の実を生む〟        〝正勝吾勝〟で剣素振り   合気の剣は〝勝速日〟                      「天の浮橋」のタイトルに 3. 合気道は争わない、表と裏で気結びする 2024/5/20                     4. 種火 2024/7/4                     5. 合気道の指導法 2024/7/16                     「令和6年のおしらせ」に7月の稽古予定(再度変更有り)                  稽古の記録 2010/8/15〜2024/7/24

1. 「うっちゃり」(打っ棄り)と合気道の返し技は〝正勝吾勝〟

 「うっちゃり」(打っ棄り)と合気道の返し技は〝正勝吾勝〟

 

相撲にある「うっちゃり」とは次のような技である。

【土俵際に寄り詰められたとき、腰を落とし、体を反って相手の体を腹に乗せ、左右にひねるようにして土俵外に投げ捨てて勝ちます。土壇場で劣勢を逆転する技です。】(日本相撲協会ホームページ)

 

【土俵際まで寄せられた、または土俵際で吊り出されそうになった力士が腰を落とし、体を捻って、相手力士を土俵の外へ投げるもの。語源は「捨てる」を意味する「打ち遣る」から。そのままでは寄り切られるところを、逆転する技である。

うっちゃりを決めるためには相当の瞬発力と勝負強さ、そして強靭な足腰が必要である。

吊りや四つ身を得意とする力士がこの技の使い手で知られており、またアンコ型の力士が自分の太鼓腹に相手を乗せるようにして掛けることもある。】(ウィキペディアより)

 

 【逆転する技】は合氣道での返し技に相当する。

 【体を捻る】とは、左右の足で片寄りなく踏ん張って上体を支えた上で、体幹軸を左右いずれかに捻ることである。

 また、「打ち遣る」とは接頭語の「打ち」が「遣る」に付いてその動作を強調する語であり、「遣る(棄てる)」とは、この場合、「物や人を遠くへ行かせる」という意味であろう。

そこで、相手の圧迫、重さを左右対称の両脚で受け止めた上で体幹軸を捻るには、確かに強靭な足腰が必要となる。

 

【不十分な場合は、同体で取り直しになる場合もよく見られる。失敗して掛けた方の体が先に落ち、行司差し違えで負ける場合(この場合の決まり手は寄り倒しなどになる)も存在する。】(ウィキペディアより)

 

【不十分、失敗】とは、つまり体幹軸を捻る動作についてである。腹に乗りそうになった相手の体が、技を掛ける力士の体幹軸を捻る方向に打ち遣られる途中で、その回転角度が乏しければ体幹軸は捻れながら両足が土俵際を踏み詰めたまま後ろに倒れるわけだ。多くの画像を見ても、体軸が作れず左右の足を対称的に踏み詰めたまま体幹軸だけを捻ろうとし続ける例に失敗が多い。

しかし、【体】とはその運動性から見た場合、片側の手、足、腰と方向を示す目付け(頭部)が一本の直立する軸となって、対側の手、足、腰は自由にその位置を置き換えるという機能を持つ。つまり、体軸を中心にして対側の手、足、腰、体幹が置き換わり、前後左右に軸足が交代していくことで非軸足側が連続して、直線的にも転換しながらも移動することが可能である。これは直立二足歩行の機序である。したがって【体】については体幹軸と体軸を区別しなければならない。

 そこで、いずれかの足を軸足として体幹軸をそれに直結し、体軸を確立すると同時に転換すれば、体軸は90度近く回転することになる。正確には体軸が回転するわけでなく、軸の周りを非軸足側の上下肢と体幹の半分が相手の圧迫の半分とともに外に開き、相手の体は土俵の外へ回りながら落ちるであろう。つまり返し技の本質は、まず自身の体の半分を「捨てる」動作である。

 非軸足先には相手の重さが伝わらず、うっちゃる方が土俵を割ることはない。相手の体との接触部が少なければ、それだけうっちゃることが容易になる。

 

体捌きを交えるなら、必ずしも常識を超えた強靭な足腰が必要とは限らない。動作の文章化をもう少し丁寧にすれば以下のようになる。

体幹軸を捻るのではなく、振り子運動で体軸を作った瞬間、正対から非軸足側へ直角に方向転換すると、土俵際に置かれたまま伸展した非軸足側に相手の重さの半分が掛かり、残りの半分が体軸に接着している(結んでいる)。体軸は捻じれるのではなく、足底が土俵上を踏みつけながらほぼ90度内に転換するから非軸足方向に回るのであって、上体は扉のように土俵外に開くこととなる。

相手の上体は術者の非軸足側の半分が土俵外に向けて進み、締め込みを掴んだ術者の同側の手は軽さを得る。相手の体幹軸は土俵外に向けて捻れるため体軸側の相手の重さは急速に非軸足側の土俵外へと移り行き、やがて相手の体幹軸に連なる足は非対称となって体幹を支えきれない。術者の軸足とは対象的に相手の異名側の足は土俵上から離れ、対側の足は傾斜した体幹軸に連なるだけで体軸を作り得ない。そして相手の上体は反転して土俵外に落ちる。術者は体軸が確立していれば土俵上で完全に残ることも可能である。

 

この動作は開祖のいわゆる〝正勝吾勝〟(『合気真髄』p70)そのものである。

例えば、返し技の本質は体軸の確立、もしくは左右交代にある。体軸とは片側の手・魂気と足腰・魄気が結んで(繋がって)、足底から頭頂までが一本の軸となって直立するものである。つまり、対側の手足が体軸から解かれて、それぞれが自由になることを含んでいる。それまでその手足にあずけていた相手の重さと自らの体重が新たな体軸に移るということになる。開祖はそれについて、〝空の気を解脱して真空の気に結ぶ〟(同p67)と表現する。

 

まとめ

    体幹軸を捻る:片寄りのない両足で地を踏む

     体軸で開く:片足を体軸にして対側を棄てる 

  いずれも両足ともに地から離れないが、

    後者は捨てた方の足先も地についたまま離れない。

                                2024/4/4

2. 合気道における上肢の運動表現

 伸筋の収縮で肘関節が良肢位から開いた状態を緊張伸展とし、弛緩して閉じることを弛緩屈曲と呼ぶことにする。手首と手指も同様の表現である。

 肩関節では、腋が閉じて上肢が下垂した状態を弛緩、腋が前方へ軽く開くと下段に伸展、直角に開いた状態を中段に緊張伸展。腋がさらに開いて肘が肩より高く上がると、上段に掲げて振りかぶる動作となる。ただし、これは整形外科学的な可動域表現とは異なる。

                               2024/4/10

3. 合気道は争わない、表と裏で気結びする

真の武道は大きく和するの道であり、身心の禊である〟(p162)

〝合気は和合の術である〟(p163)

〝争いに勝たんがためならず〟〝正勝吾勝勝速日の道程から 中略 善や正しさを知らんまで修業せねばならぬのである〟(p158)

〝大きく和し、一体となすべき本来の道である〟〝すべてのものが一体にまつりあわせ、和合させることが宇宙の心である〟〝真に和合する宇宙の心を実現する。この合気道こそ、宇宙を和合する唯一の道である〟(p36)

 

 手刀で争うとは互いに中心で当たること。つまり魄氣の陽で同側の足を踏み詰めて体軸を失い、体幹軸を前後の足で支え、その両足先を結んだ線の延長が相手の真中に結ぶように立って互いに手刀が離れないように、上下、左右、前後に競り合うことである。

したがって、争わないとは中心で当たらないこと、すなわち中心を作らないことである。はじめに魂氣の珠を包んだままの陰の気を受けの真中に与えるのである。開祖の正勝吾勝で手刀に合わせる。

中心はない。体軸・吾勝が確立している。対側の魂の比礼振り、自由な手が触れる。そこで円を描いて初めてその中に中心が生まれる

 

〝自分の中心を知らなければなりません。自分の中心、大虚空の中心、中心は虚空にあるのであり、自分で書いていき、丸を描く。丸はすべてのものを生み出す力をもっています。全部は丸によって生み出てくるのであります〟(p154)

 

相手の手刀に接して円を描けばその中心は受けの手刀の中心に一致する。当たらない。その結果、取りの手は接点が螺旋を描いて、掌を開いた手が相手の内に入る。これが魂氣の表の気結びである。

合気道は中心を奪い合って争うのではなく、気結びをするのである。手刀を陽で固めるのではなく、はじめに魂氣の珠を包んだままの陰の気を受けの真中に与えるのである。

 

魂氣を与えようとして後手を引き、受けが手刀を正面に打ち込むとき、陰の気のまま受けの上段に陽で発することはできない。もはや受け流しの選択しかない。陰の陽の魂氣を自身の上丹田に結び、非軸足をその場で軸として体軸が作られると、受けの手刀は取りの体の真中、つまり取りの魂氣の手背に接するが、手根部から前腕伸側にかけて鎬の理によって流れて落ちる。裏の気結びであり、対側の非軸足と魂氣は外入り身で返し突きを受けの後ろ三角へ放つことができる。一教裏や入り身投げ裏が生まれる。

つまり、はじめに与えようとした魂氣は後手を引いたために対側が気結びするための〝土台〟(p105)となり、入り身転換をなせば陰から陽へ返って円を描くこととなる。そこで気結びが成立する。

 

気結びとは、接点から拳一つ分以上手・〝正勝〟が内に入るか、対側の手足腰・〝吾勝〟が転換した〝正勝〟の入ることであり(p70)、後者では互いの魄気が一体となる。

 括弧内は『合気神髄』からの引用ページ数である。

                              2024/5/20

4. 種火

ここで種火とは、母指先に灯っていると思うことにする生命の火である。呼吸の相にかかわらず常時発せられる。掌には魂氣の珠が包まれ、母指は屈曲した示指に嵌って掌を塞いでいるが、母指先には魂氣が種火のように持続的に出ているものとする。(画像

非軸足側にあって体軸から解かれた手では、母指先を体幹から空中に向けることができ、広義の陽の魂氣の兆しを得る。「正勝」と抽象化された。

 体軸を作って丹田や体側から腰仙部に結ぶ手では、陽で発することはないが、体軸上や腰の周りで、陰のまま巡らすことができる。つまり、体軸に与っていても、その軸上であれば手の動作は可能であり、それも母指先からの魂氣の働きによる。このことは「吾勝」と抽象化された。

 吸気とともに母指先から大きく魂気を発する思いで「正勝」の掌を広げて上肢を伸展すれば、吸気の終末には母指先の反りにしたがって魂氣は巡り、手は円を描いて丹田に巡ってくる。魂氣の広義の陰である。

 ここで狭義の陰陽の魂氣について定義する。掌が地を向けば陰、天を向けば陽とする。広義の陰陽を先に、狭義を後に表現することにしている。

 今、広義の陽の魂氣に同期して非軸足が半歩置き変わり、魂氣の巡りに同期した継ぎ足とともに一本の体軸が確立し、一足すすむ動作が完遂する。入り身一足である。左右の手が共に体幹へ密着して魄気と結び、五体は一本の体軸として屹立し、一瞬の静止となる。これは「勝速日」とされた。

 これより直ぐ正勝吾勝で体軸と非軸足を作れば、非軸足側の手には自ずと丹田から陽に発する兆しが現れる。開祖植芝盛平はこれを「魂の比礼振りが起こる」と表現された。

                                                                                   2024/7/4

5. 合気道の指導法

合気道における指導の目的は、行いを共有すること、言葉と思いと動作の三位一体で互いに体得することである。

 

古い動画に残っている海外での講習会などを見ると、すべてを教え切らないという方法があったようだ。

指導者がやって見せてから受けに交代すると、効果的な動作が進まないように振る舞う。つまり、取りの手に結ぶことなく決して崩れず中断させる。手の内を明かさず、指導を受ける人には術技の奥深さが焼き付けられる。それによって探究心が強まり、辛抱強く継続する人が生まれるであろう。ただし、一方では興味を持てなくなって離れる人も少なくないはずだ。十分に教えてもらえなかったという思いを口にする人もいるだろう。

受けは有段者といえども、その動作が遮られる体勢のとられていることに気付き、それを超える工夫が課題として認識させられるという、これも指導の一環であるといえばそうなのであろう。

しかし、その対極にある指導として、その時に可能な限りすべてを教えるという方法がある。小林裕和師範は常々そのことを信条として我々に説いていた。空になるのを惜しいと思わずに全てを与えるなら、必ず周りからそれ以上に多くのものを容れて一杯にしてくれる、と。

 

合気道の稽古を楽しむ者にとって、はじめに達成感をわずかでも得ることができれば、その上での探究心や向上心は予想以上に膨らむであろう。いずれにしても相対動作上の考え得る不備は、顕在化したその場で指導者が共有して解決してやることこそ望ましい。とりわけ初心者に対しては習熟程度に合わせて適切な問題意識を共有することが肝要であって、無力感に覆われるままで稽古が終わることのないよう配慮することが大切である。

指導のその場で互いに礼で終わるのは形だけのものではない。

                               2024/7/16

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