手刀振りかぶり呼吸法では、受けの迫力があっての結びの技術を養う鍛錬法と言える。プロ野球のホームラン競走のように、技の成立を稽古する方法である。
つまり、取りの手を掴んで押し下げる瞬間にその力を受けの肩に向かって逆流させる技術の習得であるから、受けが迫力を寸前に抜いてしまえば稽古が成り立たない。それは、ホームラン競争でのピッチャーが変化球や釣り球を投げて打たさないことに専念するようなものである。
両手刀の手首を回内して腕全体の橈側を内側に寄せ、体幹を軽く前傾して腋が体幹の前胸側で閉じる瞬間、手根の橈屈・母指橈側外転で両母指先がそれぞれ左右の側頸を指すようにして体幹軸を伸展すると腋が前方に開く。同時に手根の背屈で両前腕は取りの正中線を挟んで縦に並列し、中指が天を向いて尺側手根から小指は受けの肩に向かう。このとき受けの手は第一指間(合谷)から肘にかけて垂直に立って取りの橈側前腕と直線的に連なり、取りの体軸と一致する。すなわち受けの体幹は取りの尺側前腕と一体になって取りの体軸側に傾斜するため膝が伸展して腰は浮き上がる。